アンテナタワー建設記
§.きっかけ
2000年、伊予郡松前町に念願の固定局(100W)を開設。
アンテナは移動用の伸縮ポールを支柱にしてダイポールアンテナを展開していましたが、実際のところは、常置場所の敷地内では収まりきらず、片側のエレメントの大部分は隣地の土地を"領空侵犯"している状態でした。
もっとも、この隣地は親戚の土地であり、しかも農地であったため、特に問題は起こらず、この状態でしばらくやってました。
ところが2004年になって、この親戚の土地が、隣接する河川堤防の拡幅事業に伴い、収用されることになってしまい、ダイポールアンテナはやむなく撤去するハメに。これがきっかけとなって、「横がダメなら縦に伸ばすしかないっ!」ということで、一年発起してタワーを建てる決心をしました。
§.タワーの選定
選定にあっては、以下のような条件を検討しました。
1)高さは高いに越したことはないが、近所とのマッチングを考えて20mH程度。
2)海岸に近く風が比較的強い地域なので、クランクアップ式かエレベータ式であること。
3)予算は40〜50万円位まで(^o^;;;;;。
…うーむ、まぁ、いつものコトではありますが、先立つものがあるとないとでは、制約事項は劇的に変わります。私の場合3)があるばっかりに、クランクアップタワーという選択肢は早々に散ります(苦笑)。まぁ、中古を安く譲り受けるという手も無くはないですが、そう頻繁に出物があるわけでもありませんし…。
そんなわけで、ほぼ必然的に、クリエートデザイン社の自立タワー+エレベーターという選択に落ち着くのでありました(ぉぃ)。
条件が20mH程度ということで、有効高さが約18mでマスト高さを入れたら20mHは十分確保できそうな、KT-18CとKT-18Rが候補になりました。この2機種のどちらにするか迷いましたが、最終的に装荷するアンテナが、将来を見越してがんばっても3〜4エレのHFトライバンダー+6〜7エレの50MHz+α程度であり、"ビッグアンテナ"を載せる予定のないこと、自力施工の為基礎の穴掘りも少ない方がいいこと(基礎ユニットの大きさは18Rの100cm△に対して18Cは60cm△)、などを勘案した結果KT-18Cを選択しました。
もちろん、許容受風面積には余裕があるに越したことはないので、敷地や資金に余裕があれば、同じ高さでもワンランク上の型を選ぶのがオススメです。
§.意を決し注文
機種が決まったら、早速近所のハムショップにて注文。結構大口の荷物になるとの事で、代金だけ店頭で支払いを済ませ、パーツはメーカーから自宅に直配してもらう様にしました。
1週間ほどしてパーツが到着。実際に現物を目にすると、予想していた以上に大量でびっくり。うろ覚えですが、軽く10個口は越えていたと思います。
特に、タワーの縦地になるアングル材は小詰めはされているものの、ハダカのままで送られてくるので、仮置きの事を考えてあらかじめ輪木を用意しておくのがベターと思います。
§.建設計画
なにはともあれ、私自身、タワーの建設は始めてであるため、とにかく「ゆっくり焦らず、無理をしない」ということを第一にしました。
無論、専門業者に依頼するほどの財力はないので(泣)、自力での建設、人手も基本的には私一人、MAXでもOMの手を借りて2人で出来ることが条件です。
§.組立
とにかく、まずは全ての部材が搬入された時点で、欠品がないかチェックします。点数は多いですが、各パーツともユニットごとに色分マーキングされているので、混同の心配はさほどありません。
組立の方法はいろいろあるようですが、各ユニットを先に地組しておいてから、建塔時に吊り上げて1段ずつ接合させる方法が、パーツの誤使用や筋交いの入れ間違い等のチェックがその都度できるのでオススメです。
各ユニットは、最初の1段は慣れないので多少手こずると思いますが、あとは、要領はほぼ同じなので、慣れてくると思います。組立てのコツは、ナット類は最初は手締めで組み立て、最後に本締めすることです。最初からスパナで締め上げていると、フレームによじれが発生し、筋交いが入らなくなります。
この作業は、私1人で行いました。毎週日曜日の2〜3時間を充当して1ヶ月余りで完成しました。
§.基礎工事
手前味噌ですが、一応、土木建設会社に勤めておりましたので、この分野は本職みたいなものです(笑)。
…で、兎にも角にもまずは穴掘りですが、私の場合は、前述のとおり隣接地が堤防の改良工事中であり、その関係でユンボがうろうろしていましたので、頃合をみて粗堀りで構わないので穴を掘ってくれないかとお願いしたところ、快く引き受けてくれました。
さすがユンボは違います、ものの10分程で粗堀り完了。おまけに残土の処分までやってくれて、本当にラッキーでした。
次に掘削面の整正ですが、まず土間コンを打ち、その上に基礎ユニットを据え付けるのが確実でFBな方法と思われますが、私の所では、出水がありましたので、単粒砕石(バラスともいう)を投入して転圧、基礎ユニットがのる箇所には30cm角3cm厚のコンクリート板を敷きました。ユニットの建り(垂直)の微調整は、このコンクリート板の上に薄鉄板を適宜敷いて調整します。
この時にアース棒も打ち込んでしまいます。当局では2m物を3本打ち込んでタワーに接続しました。
建りが決まったら、生コンを入れても基礎ユニットがズレたりしないよう、控えやステーを取って固定します。桟木やバタ角を番線で縛りつけで3方向に控えを取る方法や、ロープとターンバックルでステーをとる方法が手軽です。
基礎コンクリートの天端まわりは、型枠を入れます。
コンクリートの打設は、木の棒で押込みながら、基礎ユニットが移動しないように少しずつ打ちます。押し込んだあとも、棒を何度も突き入れて、空気を抜くようにするのがコツです。
生コン打設用のバイブレータが調達できれば、それで締め固めながら打つのがFBですね。
あ、忘れてましたが、生コンの配合は18-8-40(BB)でいいと思います(配合については詳しくは触れませんが、最もポピュラーで安価なものです。強度も十分にあります)。生コン業者には「じゅうはちのはちのよんじゅうびーびー○○uください」というふうに注文します。
ちなみに、ミキサー車の配車の関係があるので、当日にいきなり頼んでも来てくれない場合があります(特に小型車をお願いする場合)。打設日の2〜3日前には予約しておくと良いでしょう。
さて、打設後は天端面を「木ゴテ」で均します。手を小刻みに上下振動させながら均すと空気が上手く抜けます。タワー中心部は周辺より天端を1cmほど上げて均すと、雨水が溜まらずFBでしょう。
表面をツルツルに仕上げたい場合は、打設後、初期硬化が始まる5〜6時間後を見計らって、今度は「金ゴテ」で、加圧しながら擦るようにしましょう。
打設後は養生を行います。教科書どおりで行けば、7日間養生が必要ですが、最低4〜5日は寝かせておくべきでしょう。天端面は、タワー基礎程度であれば特に何もしなくて問題ないとは思いますが、出来ることなら、天端面をボロ切れや雑巾で覆い、その上から散水して湿らしておくとFBです(湿潤養生といいます)。厳冬期の打設の場合は硬化するまでは凍結に注意します。ブルーシート等で多い、練炭やストーブで暖めます。
基礎部分はこんな感じです
§.建塔
マニュアルには、人力でやるオーソドックスな方法として、木の角材に滑車を取り付けて(いわゆる"ボウス")1ユニットごと引き上げる方法が紹介されていました。
当局も、早速これを試してみましたが、
・思うように簡単には上がらない。1ユニットは数10kgはあると思いますので当たり前ですが。
・角材のたわみがすごく、今にも折れそうで危険。
…など、実際にやってみると、マニュアルに書いてあるマンガのように簡単にはいかないし、非常に危険なことがわかりました。また、仮にできたとしても、タワー上には2人、さらに吊り手が1人は要りますから、2人だけで建塔が前提である当局には無理な話です。
そんなワケで、無理して作業して、万一怪我などしてはシャレになりませんので、ここは、思い切ってレッカーをチャーターすることに決めました。
チャーターしたのは、5tラフタークレーン。
タワーのユニットは2段分をあらかじめ地上で連結しておきました。
玉掛けはオペレーターの方がやってくれましたので、私達2人はボルト類とスパナだけ持ってタワー上で待機しておけばよかったので、断然ラクです。あれよあれよという間にドンドン組み上がっていき、僅か2時間余りで完了してしまいました。
これだけスムーズかつ安全に作業が進むのであれば、レッカーのチャーター料2万円強は安いものと感じました。
§.KT-18C(+AE-18C)を使用してみての雑感
○良かった点
・コストパフォーマンスが良い。(何と言っても無銭家にはこれが一番重要(^^;;。)
・基部が60cmの三角系なので、敷地が食わない。見た目もスリムで威圧感が少ない。
・エレベータのお陰で高所作業が不要。台風が来ても枕を高くして眠れる。
・構造が簡単なため、メンテナンスが容易。(ワイヤー交換も簡単。径も4mmφなのでホームセンター等でも手に入りますし安価です。クランクアップタワーだとそうはいかない?)
○気になる点
・タワートップに登ると結構揺れる。まさか倒壊することはないと思いますが、あまり気分がいいものではないです。
・エレベータを最下部までダウンした状態で強風が吹くとワイヤーがあおられてタワーと接触し、パンパンと音が出る。
・許容受風面積に余裕がない場合はこまめにエレベーターダウンしておく必要あり(天気予報をマメにチェック)。
・エレベータ式なので装荷するアンテナの方向が限られる。(ダウン時にブームがタワーに接触するしない方向に限られる。クリスマスツリー型にする場合、干渉を嫌って互いの方向を45度ずらすなどどいった芸当が困難。)
手回しウインチ。ワイヤーはステンレス製に交換した。
§.タワーを初めて建てる方へ
…って、私も初心者なので、偉そうなこと言える立場じゃないんですが(^^;。
一応、自力でタワー建てて感じたことをば。
専門業者に依頼すると、穴掘り&基礎Con打で1日、建塔で1日、賞味2日程度で作業終了となるようですが、これはプロだからできるもの。
少なくとも素人がイチからするのであれば、はやる気持ちを抑えて焦らず手順を踏んでやるのがオススメです。
よくありがちな、ローカルから助っ人を何人もかき集めてきて、たとえば3連休で1日目穴堀り、Con打・2日目各ユニット組立・3日目建塔…なんていうタイトな日程でやっつけてしまおうなどど計画しないほうが賢明ですし、以下のような不確定要素も多分にあるということを、念頭に置いておく必要があります。
・穴掘りが順調にいくとは限らない。湧水の可能性、予期せぬ埋設物(水道管・電線等)等の障害物が出てくる場合も。また、アース処理や建り(垂直)出しの手間もある。
・生コンは教科書どおりでいくと7日間の養生期間が必要。養生を怠ると、クラック(ひび割れ)の発生や強度不足を招く可能性があります。また、雨天時の打設は厳禁です。
・タワーの部材は色分け等の区別はされているとはいえ、類似部品が多いので、多人数でワーッと組み立てにかかると、部品の混同・誤使用に最後まで気付かない場合がありますし、ボルトの増し締め等の見落としの可能性もあり得ます。自分で逐一確認しながらやる方が結局は確実かもしれません。
ちなみに、私の場合は、ちょうど仕事が忙しかったりで、なんだかんだ言って、完成まで半年近くかかりました、Hi。
いずれにしても、高所作業や玉掛け作業が伴いますので、ケガするorさせてしまっては、元も子もありません。
なにはさておき、安全第一でご安全に…。
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