§6.書類提出から検査合格まで
そんなわけで、いちおう書類も揃い、シャックのめどもついたのでいよいよ変更申請を提出することにしました(2001年8月下旬)。幸いにして地元に電監(あ、今は総合通信局か)があるので直接窓口(陸上課私設無線担当)に持っていくことにします。折角ですので、その場で書類をざーっと係官にチェックしてもらいました。ついでに再度検査までの流れを説明も受けました。
さて、それから1週間位して総合通信局からTELが入りました。案の定、参考書類についての問い合わせでした。一点目は、アンテナ展張平面図に隣家とアンテナとの最短距離が書かれていないので教えてほしいというもの。思えば電波防護指針にシビアな昨今、一番重要なファクターである距離を書いていなかったのは当方のうっかりミスでした。これはすぐに図面に加筆して再提出しました。
二点目は電波防護指針の根拠を教えてくれというもの。これには最初ちょっと慌てました。というのは前記のとおり参考書類として、計算式付きで結果表を提出していたからです。もっとも、この計算式はJG1SYK/鈴木氏作の電磁波計算ソフトのドキュメントから抜粋させていただいたもので、私自身は計算式の数学的意味なんて知る由もありませんし、電磁気学の知識もありませんので実際に根拠の説明なんて不可能です(^^;。しばし悩んだあげく、思いついたのがJARLニュースの記事。そういえば防護指針の施行前にJN誌上で何度かに分けて詳細を噛み砕いて解説していたコラム(JN誌1999年6月号およびその近号)があったのを思い出し、さっそく探し出してそれをそのままコピーして提出しました。実際、この記事は非常によく書かれていて、ポピュラーな状況を挙げて計算例や実例まで載っており、アマチュアレベルでの電波防護に関する根拠付けには充分だと思います。
それから、しばらく待つこと約1ヶ月…。総合通信局から灰色の封筒が郵送されてきました。中には「事前データ記入用紙」「設置場所付近見取図記入用紙」「電波障害調査報告書用紙」「無線局変更許可書」の4つが同封されていました。「無線局変更許可書」は言ってみれば無線局の変更の工事をやっていいですよという許可にあたるものですが、実際はすでにシャック側ではセッティング済みでしたので、すぐさま「試験電波発射届」を提出しました(これは用紙がJARLの変更申請書に入っている)。
「事前データ用紙」には、周波数、周波数偏差、プレート(ドレイン)電圧/電流、入力/出力、等のパラメーターを記入するようになっています。プレート(ドレイン)電圧/電流は、市販のリニアであればまず間違いなくパネルにメーター表示されているハズなので、それを記入します。出力についても同様で、わざわざちゃんとしたパワー計などを装備する必要はないそうです。ちなみに当局はアンテナチューナーに内蔵のパワー計で済ませました。周波数偏差は特に測定器があるワケでもないので、リグの取説にあった数値を書きました。最近のリグであれば偏差は1Hzとないはずです。
さぁ残るは「電波障害調査報告書」。ここからが正念場です。有名な「近隣住民への行脚」をせねばなりません。説明書によると無線局設置場所から半径50m以内の10戸程度(ただし隣接する家屋は全数)についてインターフェアの有無をチェックして捺印してもらえとなっています。ご他聞にもれず当局の周辺もわりあい建て込んでいて、地図でスケールアップして調べると該当するお宅は7軒でした。これでも、都市部に比べれば恵まれているほうかもしれませんが。
ま、とにかく手順と対策を考えます。
それで当初考えていたのは、ご挨拶かたがたビラを作成し、お宅に配ってまわるという方法。ビラにはあらかじめ試験電波を発射する時間帯を何通りか書いておき、いずれか都合のいい時間帯にTVI、BCI等をチェックしてもらおうというものです。しかし、この案は、ご近所に不在がちのお宅があり、試験電波の発射時間との折り合いが付きそうになかったことや、試験電波の発射ということをことさら強調すると逆に先方も身構えてしまう可能性が大であり、先々のことを考えるといろんな意味で得策でないと思えましたので今回はパス。代わりに、一定の期間、週末やゴールデンタイムに積極的に試験電波を出し、その後インターフェアがなかったかどうか聴取しに伺い、問題なければ署名捺印をお願いするという戦法でいくことにしました。
結果的には、この作戦は成功し、持参した粗品の威力もあってか、どのお宅でもまったく問題なくサインは貰えました。だだ、内1軒のお宅で14〜28MHzで送信した際にUHF35chでTVI(透明な縞模様)が入ることがわかりましたので、あらかじめストックしておいたコメット製のHPFをTV直近のアンテナ端子に挿入したところ無事止まりました。しかし、このお宅には分配器を介してほうぼうの部屋に3台のTVが配置してあったので当然HPFもTVの数だけ必要になり、その分出費がかさんだのがちょっとキビしかったですね。
本当はアンテナ直下の共有ラインにHPFを挿入できればおそらく1個で済んだハズですが、このお宅の場合、外部のコン柱に大小5本(!)のアンテナがあり、それが直下のVU混合器+受信ブースターを経て屋内に入っているといった複雑な構造で、しかも同軸にはブースター向けにDCが重畳してあり、構造的に直流的にオープンになっているコメット製のHPFは挿入できないのです。
また、これだけのアンテナがぶら下がっているとたとえUHFのchにインターフェアが出ているといってもイコールUHFのアンテナからIが混入しているとは断定できず、それを特定するのには困難を伴います。加えて直下にミキサーやブースターが入っていることがさらに話をややこしくしており、ミキシング課程での一種の相互変調、はたまたブースターでは超広帯域素子をフィルターもなしに無造作に使っているのが常ですから(蛇足ですが、昔MC5157とかいう素子でTVブースターを自作したことがありました。増幅というよりはほとんど発振状態に近かった記憶がありますがHi)この課程でI信号までもが不幸にもいたずらに増幅されてしまったのでは…とか考えると、原因を突き止めて対策をするにはチト不可能に近い状況でした。
まぁいずれにせよ、このTVブースターというものの厄介ぶりを改めて思い知らされました。
…ま、ともかくいろいろ紆余曲折はありましたが、なんとか工事落成届を提出できる段階まで漕ぎ着けることができました。意を決して落成届を提出(2001年11月中旬)。しばらくして総合通信局から連絡があり、その後何度かTELとFAXのやりとりで、落成検査は12月4日と決まりました。本当にあとは検査を待つだけです。
…ところが世の中そんなに甘くなく、検査の前日になって急に隣家からクレームが来ました。本当に狙いすましたかのようなタイミングです。
その内容としては「HPFを入れてTVの写りが悪くなった”気がする”」(現実には全然そんなことはない)あげくのはてには、「TVアンテナが向いている方角にあるお宅のアンテナ(14〜28MHzのR−DP)のせいじゃないか」(暗にウチのR−DPを撤去しろと言っている)「HPFを外せ」などど言ってきまして、こちらもそのようなことはありえないということを理論も交えながらなるべく噛み砕いて説明したのですが分かってもらえません。仕方ないので要求通りTVのアンテナ端子そばに入れたHPFは撤去しましたが、これでは元の木阿弥で何の解決にもなりませんし、当方としてもここでみすみす引き下がるわけにもいきません。 結局、TVの配線系統をチェックさせてくださいとお願いして、床下をナガナガ引き回されている同軸ラインにこっそり貫通型のコアとフィルターを入れて対策としました。
…そんなわけで、初っぱなの検査はあえなくドタキャンと相成りました(苦笑)。検査官とアポ済みの隣家の方には申し訳なく思いましたが、同時に私自身もこれには正直へこみました。やはり何事もそうそう上手くはいかないものですね。ともかく気を取り直して再度検査のスケジュールを設定します。しかしこんな時に限って今度はどういうワケかCMが俄に忙しくなり、最終的に年明けの2002年1月16日と決まりました。
さて、いよいよ検査当日です。シャック周辺の掃除・片付けをして検査に備えます。免許状を正面に掲げ、無線検査簿やその他申請書類を準備。そうそう、電波法令集(もちろん期限内のもの)も忘れてはいけません。それから、電波防護指針のからみで電磁波が基準値を超える領域に一般者が立ち入れないようアンテナヤードの封鎖をします。当局は1mほどの木杭を適当な間隔に打ち、その間にトラロープを張って立ち入り禁止措置としました。途中、適宜立ち入り禁止喚起の看板をぶら下げるとさらにFBです。
そんなことをしているうち、検査時間の14時がきて検査官2名が到着しました。もしかしたら、バードの電力計じゃないですけど、ちょっとした測定器でも持参してくるのかと思いきや、なんと手ぶらでした。
ま、ともかく、お互いに簡単な自己紹介をしたあと検査開始です。「ではこれより電波法18条にもとづき変更検査を執り行います」のかけ声とともに、まずは先に「事前データ」として提出した項目をチェック。3.5〜28MHzでリニアのパワー、ドレイン電圧/電流の指示値を実測します。驚いたのがダミーロードに繋いでやるのかと思ったら、なんとアンテナ直付けでやったこと。まぁ建前はありますけどこれってえぇんかいな?と思いました(^^;。
次に検査官が二手に分かれて、一方がアポ済みの隣家におじゃましてTVIをチェック。検査官同士は特小機のトランシーバーを使って互いに連絡を取り合いながら、3.5〜28MHzまでCWモードでEX・VVVを送信して、その都度全チャネルにインターフェアの有無を確認します。この瞬間は、だいじょうぶとは思いつつも本当に緊張します。なんとか出ないでくれ〜と祈るような気持ちで打鍵しました。日頃のおこないが良いせいか(ぉぃ)無事セーフ。隣家の方に何度もお礼を言って退散。
ここまでで、検査開始から1時間弱。もう合格したようなものです。最後に、検査官から「実際にQSOしてみせてください」と言われて、7MHzをワッチします。といっても平日の昼間ということで、SSBではロングラグチューの局ばかりでなかなか相手がいません。仕方なくCWのハイエッジ付近でCQを出し、空振りすること5回、やっとJE6QOBから応答があり、ラバースタンプでしたがこれが記念すべき500Wでの1stQSO。その間、検査官が無線検査簿を作成しており、交信終了後、即指示事項なしの合格ということで、3.5〜28MHz/500Wと書かれた免許状をOMとともにいただきました。ここまででほぼ15時。正味1時間の検査時間でしたヾ(^O^)//。
|